就活支援ジャーナル

send 【企業家に聞く】求められるのはお年寄りに向き合う介護

2015年3月12日 木曜日

株式会社日本介護福祉グループ.indd

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ジャーナル画像4 意外に思われるかもしれませんが、学生時代から介護職に興味があったわけではありません。膝のケガが原因で、子どもの頃からずっと続けていたサッカーの道が断たれ、自暴自棄になっていた私は大学卒業後、ケンカに明け暮れる毎日を送っていました。

そうした荒んだ日々のある日、黒人とケンカをして、ボコボコにされてしまったのです。腫れ上がった顔のまま、そのケンカ相手となぜか食事をすることになり、話の中で彼は言いました。

「そんなに元気なら、社会的に弱い立場にいる高齢者や障害者のために力を使ったらどうか」

その言葉がきっかけとなり、特別養護老人ホームの面接を受けたところ採用され、介護職員として働くことになりました。それからは、洗濯や食事の時に使うおしぼりづくり、汚れた車イスなどの掃除を繰り返す日々。けれども、誤解を恐れずに言えば“誰にでもできる仕事”としか感じられず、正直にお話をすると「すぐに辞めてしまいたい」と思いました。しかし、退職意向を上司に相談した際に言われた「根性ないんだね」というひと言で、「そんなことはない、やってやる!」と、心に火がついたのです。

当時は、まだ介護保険制度が整備されていなくて、介護は単なる行政措置であり、そこに「気持ち良く生活していただく」というサービスの概念はありませんでした。周囲の職員の多くは「やってあげている」というような態度で、効率を優先にしてお年寄りに敬意を払うことなく、最低限の業務しかしていないような状態です。私は違和感を覚え、他の職員に怒られようとも、一人ひとりの入居者に向き合い、ていねいに接するように心がけました。

夜勤の日は120人の入居者を2人で見なければならず、仮眠も取れない状況で生活のリズムが崩れ、とてもハードでした。それでも続けることができたのは、私が頑張れば頑張った分だけ、お年寄りが目に見えて元気になっていったから。例えば食事の介助の際、咀嚼のペースに合わせてゆっくりとスプーンを運ぶと、おなかを下すこともなく血圧も安定するなど、体調が良くなっていくものです。私の行動一つで成果がハッキリと表れるところにやりがいや楽しさを感じるようになりました。

ジャーナル画像6 特別養護老人ホームには、何十万人という規模の入居希望の方がいて、入居までに数年も待たなければならないケースが少なくありません。これからさらに超高齢化の進展が予測され、このままでは路頭に迷う人があふれかえってしまいかねない。

既存の民家を使って、小規模でも地域に数多くあるような、24時間対応可能のデイサービスがあれば、ケアができるのではないか―。その熱い想いを胸に起業することを決意したのです。当時、私は28歳。若輩が、これまでにない全く新しい介護事業を行うことに対してバッシングに遭いました。そこであきらめず地域の病院を回り、ソーシャルワーカーやケアマネジャーを訪ね、ていねいに説明して理解を得て、施設のオープンは満員で迎えることができました。

ジャーナル画像7 介護に必要なのは、「個別対応」です。奥様が介護疲れで苦しんでいたため、日中に私たちのデイサービスを利用していたある男性は、体はとても健康だったのですが、認知症を患っておりしばしば徘徊する状態にありました。その男性が若い頃はバリバリの法人営業マンとして活躍していたことを知った私は、事業説明でケアマネジャーのもとを訪れる際、同行してもらうことにしました。

回数を重ねるうちに、変化が表れました。次第にイキイキとした表情を取り戻し、3カ月後にはシャンとしてスーツを身にまとい、私を待つようになったのです。日中は「営業マン」として活動するため夜はぐっすりと眠り、負担がなくなった奥様は元気を取り戻すことができました。

介護職を目指す若者に伝えたいのは、施設利用者の一人ひとりに向き合って本当にその人に必要な介護を実践できる力がいかに大切であるかということです。日本は「お年寄りを敬う」という素晴らしい文化が根づいていたはずですが、最近薄らいでいるような気がしてなりません。私たちがいまこうして生活していられるのは、お年寄りが作り上げてきてくれたから。人生の、おそらく最後の時間を気持ち良く、楽しく生きていただきたい。そうしたお年寄りへの敬意と温かな気持ちを全ての介護職者に持ってもらいたいと願っています。

 

ジャーナル画像9 2015年度から介護保険制度が改正されるため、それに合わせた小規模多機能型居宅介護や訪問看護など、地域社会に必要とされている新たな介護サービスを積極的に展開していくという藤田氏。同時に、今後は台湾や中国、韓国、マレーシアなどへの海外展開も視野に入れている。お年寄りに心から向き合い続けてきた藤田氏が、介護にどのような革命の風を吹かせるのだろうか。想像しただけでワクワクしてくるから不思議だ。

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